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軒の出とケラバ。美しい屋根の比率

家づくりのこと

こんにちは、スタッフの吉田です。

軒については以前のブログでもご紹介した通り、建物にとって非常に重要な役割を担っています。

雨風を防ぐ機能性に加え、立面の美しさや周囲との調和にも深く関わる、設計上の大切な要素です。

 

とはいえ、実際にどれくらいの寸法で出すべきか、全体とのバランスはどうか?

簡単に決められるものではありませんよね。

そこで今回の設計ブログでは、軒とケラバの寸法バランスについて、機能面とデザイン的な視点からご紹介していきます。

 

●軒の出とは?

軒の出(のきので)とは、屋根が外壁よりどれだけ外側に張り出しているかを示す寸法のことを指します。

軒が深いほど、建物は落ち着いた印象になり、特に和風建築では「庇(ひさし)」の美しさとして重視されます。

では実際に、軒の出がどれくらいだといいのでしょうか。

それは太陽高度を用いて検討します。

真夏(夏至)の10時から15時、最も暑くて直射日光が入るタイミングで検討します。

下記の左側の図をご参照ください。

軒の出が300mmだと、窓一面に日射が入り、壁や床が熱されていることがわかります。

30cm程度の軒であれば日射遮蔽の効果はほぼありません。夏の日差しがダイレクトで家の中に入ってきます。

高温になったガラスから熱が入ってきますので部屋も同様に高温になってしまいます。

一方で、右側の軒の出900mmだと、どうでしょうか。

窓の下部のみに日射が当たるため、窓ガラスの上半分は常に軒の陰になり直射日光が当たらないことが分かります。

左の出が300mmの時に比べると軒の遮熱効果が高いことがわかります。

(軒の出が1000mmを超えると、今後は風による巻き上げにたいして構造上不安定になってしまうことから、柱で支えたり、鉄骨や特殊な構造を用いるなどの対策が必要になります。)

以上から、基本的に軒は900mmが理想とされています。

 

●ケラバとは?

ケラバとは、切妻屋根や片流れ屋根の妻側(屋根の端)を指します。

ケラバが短すぎると屋根の輪郭が弱く見え、長すぎると重たく感じられてしまいます。

そのため、出幅を長くできないケラバ側には、庇や下屋を設けて日射を遮るのが良いでしょう。

 

●軒とケラバ。美しく見える比率は・・・?

では、ケラバの出はどれくらいがベストなのでしょうか。

重要なのは、軒とのバランスです。

一般的に、軒がケラバより長くします。その理由は、建物全体が水平に広がって見え、視覚的な安定感が生まれるからです。

最も美しく見える軒とケラバの比率・・・。

私も設計するときに毎回悩む部分ではありますが、建築の美しい比率と言えば、

「黄金比・白銀比」

を用いることが正解なのではないかと思っております。

 

●黄金比・白銀比とは

建築美の世界では、黄金比や白銀比と呼ばれる「自然に美しく見える比率」として用いられます。

黄金比は神殿や塔、自然の構成物に多く用いられており、白銀比は日本の寺院仏閣に多く用いられている比率です。

こちらの比率を軒とケラバの寸法に応用してみますと・・・

軒が先程述べた通り、理想の900mmとしますと、

黄金比なら、ケラバ約550mm

白銀比なら、ケラバ約640mm

となり、どちらも約60cm前後が美しい寸法ということになります。

 

確かにこうしてケラバの出を600mmのものと、300mmのもので比べてみますと、

左の600mmの方がなんだかしっかりしていて落ち着きがあるように見えます。

右の300mmの方は軒の900mmに比べると短すぎてのっぺりした貧相なイメージがあります。

 

結論、

900mmの軒の出には、ケラバの出600mmが落ち着きある美しいデザイン

なのではないでしょうか。

特に弊社のような和の風合いを持つ建築との相性が良い比率だと感じます。

 

以上、軒の出とケラバについてのお話でした。

「軒の出」や「ケラバの出」は、単なる寸法以上に、建物の印象や快適性を左右する重要な要素です。

寸法の比率ひとつで、建物の印象は大きく変わります。

設計の際には、ぜひ本記事の内容をご参考にしていただければ嬉しいです。

 

 

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