「はだすすき 尾花逆葺き 黒木もて
造れる室は 萬代(よろずよ)までも」
万葉集より
屋根にススキを葺き、丸太を骨組みにした
ような家はいつまでも栄えることだろう。
日本では古来、長いあいだ茅の生産地である
茅場(草原)が経済の原動力だった。
牛馬の餌となり、農耕や輸送を支えた。
屋根に葺いたものは数十年経って役割を終え
れば肥料として土に戻る。
草原は毎年、野焼きし、また新たな芽が吹く。
そんな草の循環こそが「萬代まで」という
永続性を支えた。
茅とは、ススキ、カヤ、ヨシ(アシ)、稲わ
ら、麦わらなど屋根を葺く植物の総称のこと。
日本での茅葺き家屋のピークは農村が戦後復
興に沸いた昭和30年代。以後、減少が続き、
現在は10万棟程度。