建築家、隈研吾氏より。
工業化社会は、基本的に、商品の世界です。
商品は出来立てが一番素晴らしいし、新品
が最高だし、時間が経てば経つほど、どん
どん劣化していく。それが商品という存在
です。
しかし、これからの人間は、歳をとるほど
良くなるという生き方をするでしょう。
少子高齢化社会の時間の概念は、エイジン
グを善きものとする概念です。
その先駆けとなる建築でありたいのです。
自然素材は劣化していく美しさがある。
しかし、これは快・不快の問題ではない。
なぜなら「木は傷ができたことで、より
良くなった」と人が考えることには、
もちろん木の建築は手直しできるという
柔軟さが挙げられるが、それだけではな
く、その背後に「継承性」というものが
あるからだ。
ヨーロッパにおいて建築というものは、
100年、200年は当然持つものだという
前提があります。都市なら都市、村な
ら村と、それぞれ継続性がある舞台が
あって、人は死んでも舞台だけは残り
、長い時間にわたって存在し続ける。
その舞台の上で、自分という役者がこ
の短い期間だけ劇をする。とりあえず
演出して踊るけれど、次はまた別の役
者がちゃんと登場して踊る。
その継承性というものは、人間にとっ
て根源的な安心につながります。
その安心感こそ、文化、文明の本質と
いうことができます。