こんにちは、スタッフの吉田です。
家づくりにおいて、間取りや設備だけでなく「地域性」に目を向けることは、暮らしの快適さや安心感を大きく左右します。
徳島県は、海・山・川に囲まれた自然豊かな土地。
四季折々の表情を見せる風景と、地域に根づいた文化が、日々の暮らしに彩りを添えてくれます。
私たちは、そんな徳島の魅力を住まいに映し出すことを大切にしている、地域密着型の工務店です。
気候や風土、そして人々の暮らしに寄り添った設計を取り入れることで、心地よく、安心して過ごせる住まいが生まれます。
「大好きな徳島に、もっと寄り添える住まいを」
そんな想いを込めて、今回は徳島ならではの家づくりのヒントをご紹介いたします。
●気候に対する工夫
徳島県は瀬戸内海式気候と太平洋側気候が混在しており、地域によって微妙に気候が異なりますが、全体としては以下のような共通の特徴があります。
①夏は蒸し暑く、日射が強い(特に西日)
②冬は比較的温暖だが、朝晩は冷え込む
③眉山など山から吹き下ろす涼風がある
④年間を通して湿度が高め
こうした気候に対応する設計の工夫が、快適な室内環境をつくります。
工夫①:軒・庇の活用
徳島は、夏季には強烈な日差しが照りつけ、冬季には穏やかな日射が得られるという、四季の変化がはっきりとした地域です。
この気候特性を活かし、建築において「軒」や「庇」の設計は非常に重要な役割を果たします。
深い庇を設けることで、夏の高い太陽角度(78.4°)による直射日光を遮り、室内の温度上昇を抑える一方、冬には低い角度(31.6°)から差し込む太陽光を取り込むことができます。

工夫②:冬は日中の日射による蓄熱を利用
徳島の冬は朝晩の冷え込みが厳しくなるため、日中の太陽光を活用した蓄熱設計が有効です。
南側の窓には、日射取得型のLow-Eガラスを採用することで、太陽光を効率よく室内に取り込み、自然のエネルギーで室温を穏やかに保ちます。
さらに、床材には蓄熱性と調湿性に優れた無垢材を使用することで、昼間に得た熱をやわらかく蓄え、夜間にかけて緩やかに放出します。

工夫③:通風を意識した窓配置
南北に風が抜けるように窓を設け、高窓や地窓を組み合わせることで、自然な空気の流れを生み出します。
高窓は暖かい空気を上部から排出し、地窓は涼しい空気を低い位置から取り込む役割を果たし、室内の温度ムラを抑える効果があります。
夏季には、眉山など徳島の山々から吹き下ろす涼風を活かし、心地よい自然の風を室内に取り込むことで、冷房に頼りすぎない暮らしが可能になります。
特に夕方から夜にかけて吹く山風は、熱のこもった室内をやさしく冷まし、快適な睡眠環境にもつながります。

工夫④:湿気対策としての床下通気・調湿素材
徳島は太平洋側に位置し、年間を通して湿度が高く、特に梅雨時期や夏季には蒸し暑さが際立ちます。
こうした高温多湿な気候に対応するため、住まいには湿気対策が欠かせません。
まず、床下の通気性を確保することで、地面からの湿気の滞留を防ぎ、構造材の腐朽やカビの発生を抑制します。
さらに、内装には漆喰や和紙クロスなど、調湿性に優れた自然素材を選ぶことで、室内の湿度を安定させ、空気の質を向上させることができます。
これらの素材は、湿度が高い時には余分な水分を吸収し、乾燥時には放出する働きがあり、季節を問わず快適な室内環境を保つ助けとなります。
徳島の気候風土に寄り添ったこうした工夫は、住まいの耐久性と居住者の健康を守る上でも重要な要素です。

●配置・災害の配慮
徳島は、台風や豪雨の影響を受けやすい地域です。
特に夏から秋にかけては、南海上で発生した台風が四国沿岸を通過することが多く、強風や集中豪雨による被害が懸念されます。
さらに、徳島県は南海トラフ地震の想定震源域に近く、大規模地震の発生が懸念される地域でもあります。
工夫①:台風・暴風対策
屋根形状や軒先の設計には、風の流れを受け流す工夫が欠かせません。
暴風時に風が屋根の下側に回り込み、軒をまくり上げてしまうと、垂木や軒先の構造が破損する恐れがあります。これを防ぐためには、屋根の勾配や軒の出幅、垂木の寸法を調整し、軒の耐力を十分に確保した設計が重要です。

工夫②:豪雨時の排水計画
徳島の山間部や傾斜地では、雨水が一気に地面を流れ下るため、敷地内の排水計画が非常に重要です。
特に山のふもとでは、地面に落ちた雨水が集中して流れ込むため、外構の排水設計が不十分だと浸水のリスクが高まります。
雨水の流路設計や、透水性のある舗装材の採用、排水桝の配置など、外構全体で水の動きをコントロールすることが、安心につながります。
工夫③:南海トラフ地震への対策
南海トラフ地震に備え、最高等級の「耐震等級3」を確保することが求められます。
柱や梁の断面寸法、耐力壁の配置バランスの最適化、接合部の補強など、構造全体にわたる精密な設計が必要です。また、基礎部分には地盤調査に基づいた適切な杭やベタ基礎を採用し、液状化や不同沈下への対策も講じます。さらに、家具の転倒防止やガラスの飛散防止といった室内の安全対策も併せて検討することで、より安全性の高い住宅となります。
●文化を取り入れる
徳島には、阿波踊りや藍染、地元の食文化など、豊かな地域文化があります。
住まいの中にそれらを取り込むことで、暮らしに彩りと愛着が生まれます。
工夫①:地元材の活用(杉・桧など)
四国産の木材を使うことで、地域経済への貢献と、木の香りや温もりを感じる空間づくりが可能です。
日本の地域で育った木を使うことは、徳島の四季の変化にも馴染み易く、四国の森林の活性化や環境保全にもつながっています。
工夫②:藍染や和紙など、地元の素材をインテリアに
壁紙や照明、ファブリックに藍染を取り入れたり、阿波和紙でインテリアに柔らかさを演出したり。暮らしの中に徳島の美意識を宿すことができます。

工夫③:自然の眺望を取り込む設計
徳島は、山々の稜線や清流の流れ、田園の広がりなど、豊かな自然景観に恵まれています。
住まいの設計において、これらの眺望を積極的に取り込むことで、心地よさと季節感が生まれます。
例えば、山の稜線や川の流れが見えるように、視線の抜けを意識して窓を配置する。
屋外と屋内をデッキでゆるやかにつなぎ、自然との一体感を高める。など、設計の工夫によってより豊かな空間となります。

以上、徳島ならではの家づくりのヒントをご紹介しました。
徳島の気候や風土、文化に寄り添った設計は、暮らしの快適性を高めるだけでなく、地域への愛着や誇りを育みます。
日々の暮らしがもっと豊かに、愛着の沸く住まいとなるようなヒントはこの地域性を取り入れることではないでしょうか。
ぜひ家づくりの参考にしていただければ嬉しいです。



